Yamaguchi-Noda Laboratory

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研究:ナノ材料と自己組織化

(08年度・卒業論文配属説明資料はこちらです)

ナノメータスケールで構造を制御すると、材料に様々な性質を与えることができます。私たちはこのナノテクノロジーの中で、原子・分子からナノ材料を、ナノ材料からデバイスを組み上げるボトムアップ方式に注力しています。 実験とモデリングの両面から、ナノの世界を基礎的に研究し自然の摂理を学ぶとともに、自然の力を借りてナノ材料を大規模に作る自己組織化プロセスを開発しています。 具体的には、液相プロセスで半導体ナノ粒子や高分子等を、気相合成法でナノチューブやナノ結晶薄膜等を作製し、情報デバイス、太陽電池、医療診断などへの応用も進めています。産学共同研究も、積極的に推進しています。

例えば、太陽電池の大規模・低コスト製造は、将来のクリーンエネルギーシステム構築に重要です。 現行の結晶シリコン型では高純度シリコンが不足しています。 球状化ないし薄膜化により、等量のシリコンから製造する太陽電池の面積を大幅に増やす研究をしています。 また、各種の薄膜型太陽電池の開発も盛んですが、それに必要な透明電極ITOの希少金属Inが枯渇しています。 カーボンナノチューブで代替透明電極を作る研究も進めています。 このように、全体システムを把握した上で、材料技術によりボトルネックの解決を目指しています。

光機能材料 | 自己組織化 | ナノチューブ | 薄膜

光機能性材料の作製と、メモリ・発光デバイス・医療診断・太陽電池への応用

半導体はナノサイズ化すると量子閉じ込め効果が現れます。 CdSe等の化合物半導体ではカラフルで強いフォトルミネッセンスを実現できます。 当たった光の量に応じて発光特性が変わる為、光メモリになります。 また、光照射でナノ粒子が基板上に集積する現象も見つけました。

有機半導体でも構造に応じて発光特性が変化します。エレクトロルミネッセンスを利用するとディスプレイにもなります。 シリコンナノ粒子も可視光領域の蛍光を持ち、生体適合性の点からバイオラベリング応用に期待されています。

また、結晶シリコンは太陽電池の主役でもありますが、高純度シリコンが不足しています。 シリコンを基板状から粒子状に変え、かつ集光技術をあわせると、シリコンを節約できます。 この、球状シリコン太陽電池の研究も進めています。
  • 上澤 明央 (D1): プラズマCVDによるSiナノ粒子合成プロセスの開発
  • 山口 雅裕 (D1): PPV誘導体の光特性とデバイス応用
  • 和田 幸祐 (M2): 半導体ナノ粒子の光集積
  • 沈 鵬 (M1): プラズマCVDによるSiナノ粒子合成プロセスの開発
  • 大井 佑記 (M1): 有機ELデバイスにおける電圧・電流特性のモデリング
  • 荒木 謙智 (B4): 太陽電池用シリコンボールの造粒プロセスの開発
  • 松本 芳 (B4): 太陽電池用シリコンボールの再結晶化プロセスの開発

光集積によるCdSeナノ粒子のパターニング


導電性ポリマーの構造制御による多色蛍光

ナノ材料の分散・凝集と、ナノプロセッシング

液相分散ナノ粒子は、多くの場合、基板上に並べて使います。 塗布時のせん断で液中に、また塗布・乾燥過程で基板上に、規則構造を自己組織的に作ります。 この過程の観察にはモデリングが威力を発揮します。 ナノ粒子を高速に大面積に並べる・パターニングする実用プロセスの開発を進めています。

またカーボンナノチューブでも、液相に分散し、塗布・薄膜化する方法は、各種デバイス作製に重要です。 直径数nmで長さ数mmとアスペクト比の非常に大きい材料の凝集・分散の理解・制御も試みています。
  • 若林 智紀 (M2): ナノ粒子分散液滴の乾燥過程における粒子系自己組織化現象の研究
  • 中津 浩彰 (M2): ナノ粒子系ゲルの自己組織化構造とレオロジー
  • 荻野 佑美 (M1): カーボンナノチューブの分散・塗布とバイオ応用
  • 奥 圭介 (M1): コロイド凝集系におけるバイモーダル分布形成
  • 真野 涼平 (M1): 流れによる液相ナノ粒子系の自己組織化とレオロジー
  • 太田 誠一 (B4): 液相1Dナノ粒子系の乾燥過程における自己組織化メカニズム

ナノ粒子の自己組織配列のモデリング


フォトポリマー薄膜での自己組織的構造形成

カーボンナノチューブ成長の基礎と、大量合成・デバイス応用

単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、直径1 nm前後で長さがmm以上と非常に細長く、 独特な物性も持つナノテク時代の代表的な材料です。 様々な応用が提案され膨大な研究開発がされてきましたが、合成技術が未成熟で、実用例は極僅かです。 ナノチューブの合成には、直径1 nm前後の金属ナノ粒子触媒が重要な鍵を握ります。

私達は、基板上で触媒元素が動き、自己組織的にナノ粒子を形成する過程に着目しました。 触媒金属の膜厚分布を形成、アニールすると、粒径・数密度・組成の異なる様々なナノ粒子を1枚の基板上に作ることができます。 1回の実験で触媒を発見できる、このコンビナトリアル触媒探索技術を武器に、基礎・応用の両面から研究を進めています。 機械工学専攻・丸山研究室と共同研究しています。

また、産学共同研究により、省エネルギーなフィールドエミッションディスプレイ用のエミッタ作製技術や、 ディスプレイ・太陽電池で不可欠な透明電極の研究開発も進めています。
  • 筧 和憲 (D3): 金属ナノ粒子の自己組織形成と単層・多層カーボンナノチューブの触媒成長メカニズム
  • 杉目 恒志 (D1): 単層カーボンナノチューブの核発生・成長機構とカイラリティ制御合成
  • 伊藤 龍平 (M2): 触媒ナノ粒子からのカーボンナノチューブの持続的成長
  • 長谷川 馨 (M2): カーボンナノチューブの高速成長とその限界
  • 白井 聖 (M1): ソリッドモード触媒の開発とカーボンナノチューブの低温成長
  • 諸隈 慎吾 (M1): カーボンナノチューブ成長での触媒失活メカニズム
  • 野村 桂甫 (B4): 機能分担触媒の開発とカーボンナノチューブの低温成長
より詳しくはこちらもご覧下さい。

アルコールCVD法で合成した良質なSWNT


CMD法による触媒探索


世界トップクラスのSWNT高速成長
(2-3 mm / 30 min)


SWNT SuperGrowth
高解像度版はこちら

薄膜成長の基礎と、情報デバイス・太陽電池応用

基板上に原子・分子を降らせると、ナノ粒子が自然に形成します。 この現象を使うと、応用材料が簡単に作れます。 ハードディスクでは10 nm程度の磁石に情報を記録しますが、この方法でサイズ・間隔・向きを揃えて作れます。

金属・シリサイド薄膜は、集積回路等の電子デバイスでの電極として重要です。 数10 nmスケールの空間で、これらの多結晶薄膜がどの様に出来るかを理解・制御し、実デバイスへの適用を目指しています。

基板と膜の結晶方位が揃って成長するエピタキシーは、結晶構造の原子レベルでの制御に使われます。 高温では高速・大面積に起きるこの現象を活用し、 太陽電池の単結晶シリコン基板(厚さ数100 um)の薄膜(約10 um)への置き換えと、 大規模・低コスト製造の実現を目指しています。
  • 中谷 勝哉 (研究生): 磁気記録媒体用FePtナノ結晶薄膜の作製
  • 高嶋 智史 (M2): 塩素共存下でのCu成膜機構の理解と、微細孔埋め込み技術の開発
  • ムンガイ フランシス(M1): RVD-ELO法による太陽電池用単結晶シリコン薄膜の作製
  • 辻 由樹絵(B4): コバルトシリサイド薄膜形成過程の理解と電子デバイスへの適用
より詳しくはこちらもご覧下さい。

垂直配向L10-FePt磁性ナノ粒子


太陽電池用単結晶シリコン薄膜合成

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