本研究室は、液相系プロセス(塗布)と気相系プロセス(CVD, スパッタ)を有する世界でも類を見ない研究室です。 ナノの世界の現象を基礎的に研究し自然の摂理の理解に努め、ものづくりのプロセス・結果としての構造・機能の発現の流れを体系化、 ニーズに合う材料をシンプルに作る応用研究も進めています。
基板上に原子・分子を降らせると、ナノ粒子が自然に形成します。
この現象を使うと、応用材料が簡単に作れます。
単層カーボンナノチューブは直径1 nm前後(髪の毛の十万分の一)のナノ材料で、
合成に必要な1 nm前後の触媒粒子は、基板上に疎らに撒いた原子から自然にできます。
ハードディスクでは10 nm程度の磁石に情報を記録しますが、この方法でサイズ・間隔・向きを揃えて作れます。
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![]() CMD: 単層カーボンナノチューブ触媒探索法 ![]() 1時間で3.6mm成長したCMD基板上のCNT ![]() 垂直配向L10-FePt磁性ナノ粒子 |
高温の界面活性剤融液に原料を注入し、急速に核発生させ成長を止めると、ナノ粒子が自然に形成・分散します。
半導体はナノサイズ化すると量子閉じ込め効果が現れます。
CdSeやInP等の化合物半導体ではカラフルで強いフォトルミネッセンスを実現できます。
当たった光の量に応じて発光特性が変わる為、光メモリになります。
有機半導体でも構造に応じて発光特性が変化します。
フォト/エレクトロ・ルミネッセンスのデバイス応用も進めています。
Siは安全性が高く、医療診断応用を目指しています。
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![]() CdSeナノ粒子における蛍光振動現象 ![]() 導電性ポリマーの構造制御による多色蛍光 |
液相分散ナノ粒子は、多くの場合、基板上に並べて使います。
塗布時のせん断で液中に、また塗布・乾燥過程で基板上に、規則構造を自己組織的に作ります。
この過程の観察にはモデリングが威力を発揮します。
また、光照射でナノ粒子が基板上に集積する現象も見つけました。
ナノ粒子を高速に大面積に並べる・パターニングする実用プロセスの開発を進めています。
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![]() ナノ粒子の自己組織配列のモデリング ![]() フォトポリマー薄膜での自己組織的構造形成 |
基板と膜の結晶方位が揃って成長するエピタキシーは、原子レベルでの結晶成長の制御に使われますが、高温では高速・大面積に起きます。
この現象を活用し、太陽電池の単結晶シリコン基板(厚さ数100 um)の薄膜(約10 um)への置き換えと、大規模・低コスト製造の実現を目指しています。
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![]() 太陽電池用単結晶シリコン薄膜合成
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東京大学 大学院工学系研究科
化学システム工学専攻 山口・岡田研究室