2009年7月13日の日刊工業新聞1面に、 「単層カーボンナノチューブの大量合成技術」 が掲載されました。

残念ながら誤りが多く、本技術だけでなく既存の技術に対してまでも誤解を招きかねないので、 日刊工業新聞の担当記者殿の了解の上、本HPにて補足させて頂きます。 (日刊工業新聞では、近々、訂正記事も掲載して頂けるとのことです)

タイトルの「単層CNTを10分で合成」について
10分で合成することは何ら珍しくもありません。 高純度(99wt%)・長尺(数100um)の単層CNTを流動層で合成したことが、技術的に新しく、 かつ応用上も重要になります。 単層CNTは記事の通り非常に高価で、その低コスト化には、同じサイズの装置で 如何に多量の単層CNTを作るかが重要になります。 「反応器容積あたりの生産性」の向上が本技術のポイントですが、 新聞記事としては解りにくく書きにくいと思います。

2段目の「従来法の約1000分の1のわずか10分で生成」について
タイトルと同じ間違いです。 従来法では、合成に1万分もかかる訳では決して有りません。 従来法の1000分の1の容積の反応器で、同量の単層CNTを合成できるよう技術開発を進めています。 その数値は、5〜6段目の通りです。
なお、我々は別途、ガラス基板上に1秒で単層CNTをパターン成長させる技術も開発しましたが (ガラス上では1時間かかることも多く、比べると1千倍速いです)、 記者殿はそれと混同されたのかも知れません。

7段目の「ビーズ表面に数百ナノメートルの長さの単層CNT」について
SEM写真の通り、数百nmではなく、数百umです。

以上、主な誤りについて補足説明をさせて頂きます。

今回の記事の誤りの一因には、本技術の分かりにくさがあると考えております。 「1日に○○kg合成」でしたら分かり易いですが、「○○kg/L-reactor/日」は 学術的には重要でも、新聞向きではありません。 分かり易い成果を出すまで新聞発表をしない予定でした。 今回、日刊工業新聞社から取材を申し込んで下さいましたので、 折角の機会だから紹介して頂こうと考えた私の判断が甘かったと反省しています。
(トップページに掲載して頂いたこと自体は、とても嬉しいことです)
なお、新聞記事は事前にチェックすることは出来ません...

本技術は、日立化成工業様と共同で、実用化を目指した開発を始めました。 1日も早く、「1日に○○kg合成」を達成し、多くの用途に提供できるよう邁進しております。 用途開発も実用化には不可欠ですので、お気軽にお問い合わせ下さい。

2009年7月16日 野田 優
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